マットレスのカタログに、必ずと言っていいほど記載されている 体圧分散 のメリットと注意点を解説します。
併せて、本当に効く体圧分散マットレスの選び方・ポイントを紹介していきます。
「体圧分散っておいしいの?」と思っていた方は、ぜひ参考にしてください。
体圧分散 マットレス|体圧分散とは?
体圧分散とは?
体圧分散とは、身体に掛かる 圧力を分散する性質 のことです。
【体圧分散のイメージ図】
人間が床などに身体を横たわると、普通は身体の重み(体圧)がお尻や肩などの凸部に集中する状態となり、体圧の分散は起こりません。
対して、下図のように床面が身体の凹部を持ち上げるように変化すると、背中やお尻に集中していた体圧が、腰・足・頸などに均等に分散することができます。
この状態を体圧分散と言います。
体圧分散に優れたマットレスは、仰向け寝のときだけでなく、凹凸の激しい横向き寝にも柔軟に形を変え、体全体を面で支えてくれます。
体圧分散 マットレス|メリット
体圧分散のメリットは次の3つです。
- 圧迫によるうっ血や緊張を防ぐ。
- 面で身体を支え、筋肉の負担を減らす。
- 正しい寝姿勢の維持をサポートする。
うっ血や緊張を防ぐ
体圧分散性が低いマットレスでは、背中と臀部にピンポイントで体圧が集中するので、短時間でもうっ血や痛みを引き起こします。
【人間の凸部分にかかる体重の比率】
人間は、背中と臀部だけで全体重の77%の負担が掛かります。
理由は、圧力(Pa)の物理法則で説明できます。
- 圧力は、支える接地面積が大きくなるほど小さくなる。
- 圧力は、支える接地面積が小さくなるほど大きくなる。
つまり、面より点の方が支える重量が大きくなるため、筋肉や骨を押しつぶす事になります。
【圧力の公式】
- 圧力(Pa)=力(N)÷面積(㎡)
ちなみに、睡眠中にうっ血や緊張が起こると、反射的に寝返りを打って状態を緩和しようとします。
寝返り自体は睡眠に必要な行動のひとつですが、必要以上に寝返りを打つと、途中で目が覚めてしまったり眠りが浅くなる原因になり、睡眠の質低下に繋がります。
【うっ血や緊張を防ぐメリット】
- 途中覚醒の予防。
- リラックス状態の維持。
筋肉の負担を減らす
人間の骨や内蔵は、筋肉が引っ張り合うことで支えていて、それは寝ている間も変わりません。
体圧分散性能によって、マットレスが凹部分を支えてくれると、睡眠中に筋肉が支える力を軽くできるので、睡眠による疲労回復の効率をサポートしす。

【筋肉の負担を減らすメリット】
- 筋力のある方:より一層の疲労回復効率が高まる。
- 筋力のない方:寝ることによる筋肉疲労を軽減できる。
正しい寝姿勢を維持する
寝姿勢は、立ったときと同じ背骨のカーブを維持できないと、腰痛や肩こり、内蔵不調の原因になります。
体圧分散性に優れたマットレスは、凹部分を最適な圧で押し上げることで、寝ている時でも立った時と同じ姿勢になるようサポートしてくれます。
● 理想的な仰向け寝のイメージ

● 理想的な横向き寝のイメージ

【正しい寝姿勢のメリット】
- うっ血による腰痛・肩こりの軽減サポート。
- 背骨歪みによる腰痛の軽減サポート。
- 骨盤歪みによる内蔵機能の低下予防サポート。
体圧分散 マットレス|デメリット
体圧分散には柔軟性が必要ですが、柔らかいだけのマットレスには注意も必要です。
主な注意点は次の3つです。
- 通気性が悪い。
- 寝返りが打ちづらい。
- 背中や腰が沈み込み過ぎる。
通気性が悪い
体圧分散マットレスには、身体を包み込むように密着する素材が好んで使われます。
中でも、低反発ウレタンは通気性が皆無なので、フル低反発ウレタンのマットレスには注意が必要です。
ちなみに、低反発ウレタンに限らず、密着性能・沈み込む性能・柔軟性能の高い素材は、通気性が苦手なケースが多いです。
【通気性の悪い素材のデメリット】
- 寝汗による冷えが起こりやすい。
- 体温上昇による中途覚醒のリスクが高まる。
寝返りが打ちづらい
体圧分散性能に優れた素材は柔らかいため、寝がえりが打ちづらいことが多いです。
例えるなら、砂浜を歩くのと同じ原理で、動こうとするたびに、力が吸収されてしまうため、より大きな力を必要とします。
寝返りが適切に行われないと、レム睡眠⇔ノンレム睡眠の切り替えができなくなるので、睡眠が浅くなります。
睡眠には2つの種類があり、交互に繰り返すことで眠りを深め、心身を効率的に休ませる仕組みがあります。
【睡眠の種類】

- ノンレム睡眠:脳も休息する深い眠り。
- レム睡眠:脳が活性化している眠りの浅い状態。
寝返りにはノンレム睡眠とレム睡眠を切り替えるスイッチのような働きがあるので、適度な寝返りを打てないと眠りが深くならず、充分な回復効果を見込めません。
【寝返りが打ちづらくなることのデメリット】
- 眠りが深くならず、充分な睡眠効果を得られない。
背中や腰が沈み込み過ぎる
体圧分散は、埋まるように身体が沈み込むイメージが強く「体圧分散=ただ柔らかいだけ」と思いがちです。
概ね正しい理解ではあるのですが、「ただ柔らかいだけ」のマットレスは、むしろ、腰痛や肩こり、内蔵不調の原因になるので注意が必要です。
柔らかいだけのマットレスは、次の2STEPで寝姿勢を歪め、腰痛を引き起こします。
❶ 腰・肩を中心に体圧が集中する
人間の体圧は位置によってかかる比率が異なり、腰部に最も集中します。
\横になった時のパーツ毎の体圧比率/
❷ 体圧の集中する背中・腰部が沈み込み、徐々に姿勢をゆがめる
やわらかいだけのマットレスだと、背中・腰部が必要以上に沈み込み、長時間背骨を歪ませ、歪んだ姿勢を固定化してしまいます。

● 不自然な姿勢が長時間続くことで背骨・骨盤が歪み腰痛を引き起こす
姿勢の悪化が腰痛の原因となる背骨の歪みを助長し、長時間の不自然な姿勢が、腰痛を引き起こします。
【背中や腰が沈み込み過ぎるデメリット】
- 姿勢を歪め、腰痛・肩こり・内蔵疾患などの原因になる。
体圧分散 マットレス|敷布団とマットレス 比較
敷布団とマットレスの違いについて
敷布団は、畳の上で使うことを前提とした厚めのクッションといったところで、体圧分散性は弱めです。
寝具単体の基本性能で比較してみても、マットレスの方に分があります。
【マットレス・敷布団 性能比較】
性質 | 説明 | 敷布団 | マットレス |
反発性 | 睡眠の質を高める、寝返りをサポートする性質。 | × | ◎ |
体圧分散 | 姿勢を保持し、筋力の負荷を軽減する性質。 | △ | ◎ |
保持力 |
沈み込みを防ぎ、姿勢の歪みを防ぐ性質。 | 〇 | ◎ |
通気性 | 睡眠環境を換気し、良好な睡眠を維持する性質。 | △ | 〇 |
保温性 | 外気を遮断し、冷えを抑制する性質。 | △ | ◎ |
防ダニ・防カビ性 | 寝具内のアレルゲンを抑制する加工。 | △ | ◎ |
ちなみに、敷布団は床や畳に底付きすることで沈み込みを抑制する仕組みなので、姿勢歪みの原因となる「腰部の沈み込み」は起こりません。
ただし、体圧分散性は弱いので、敷布団による姿勢の矯正や筋肉の負担軽減効果も期待できません。
対して、マットレスには寝具に必要な機能と性能全てを内包したオールインワンな寝具です。
寝具としての性能は、全ての面において敷布団よりも高いです。
【マットレスの特徴】
マットレスには、敷布団にはない以下の特徴があります。
- 高反発性:寝返りをサポートする。
- 柔軟性&クッション性&厚み:姿勢の歪みを最適化し、筋肉の負担を軽減する。
マットレスと敷布団の違いは芯材の有無で、マットレスの一部(詰め物)に相当するのが敷布団になります。
【マットレスと敷布団 構造的な違い】
マットレスは、大きく2つの素材で構成された寝具です。
- 表層(詰め物):ウレタン・中綿・羽毛・羊毛など
- 芯材:ウレタン・スプリング・ラテックスなど
- マットレス:「詰め物+芯材」で出来た寝具。
- 敷布団:詰め物のみの寝具。
体圧分散 マットレス|選び方
体圧分散マットレスを選ぶポイントは、柔らかさ以外の特性をバランスよく備えていることです。
- 反発性
- 柔軟性
- 保持力
- 通気性
- 多層構造
反発性

反発性能には、次のメリットがあります。
- 寝返りをサポートする。
- 凹部の押し上げて、体圧分散をサポートする。
選ぶときは、「高反発」を謳うマットレスから探すのが手っ取り早いです。
注意点はマットレス表層のかたさで、かたい上に厚みがあると、体格によっては身体が沈み込めずにうっ血や緊張を招き、充分な睡眠効果が得られません。
\かたいマットレスで体圧が分散されないイメージ/
体表的なおすすめ素材は以下です。
- 高反発ウレタン
- 高反発ファイバー
- ラテックス
- マットレスには、寝返りをサポートできるだけの反発性能があるものを選ぶ。
- 「高反発=硬い」ではないので、体格に合わせた適度な硬さを選ぶ。
柔軟性
柔軟性能には、次のメリットがあります。
- 身体を適度に沈み込ませ、背骨のカーブを理想的な位置に保つ。
- 身体を面で支え、体圧を分散する。
選ぶときは、「柔らかいだけ」ではなく、充分なサポート力があるものを選んでください。
体表的なおすすめ素材は以下です。
- 高反発ウレタン
- 高反発ファイバー
- ラテックス
- 低反発ウレタン
- 綿(合成・自然含む)
- 表層に柔らかい素材を使っているのを選ぶ。
- 沈み込みを防ぐだけのサポート力があるものを選ぶ。
サポート力
サポート力には、次のメリットがあります。
- 沈み込みを防ぎ、背骨のカーブを理想的な位置に保つ。
選ぶときは、マットレスの芯材のかたさに注目し、体重に最も適した「かたさ」を選ぶのがポイントです。
かたさの基準は、メーカーで明示されるかたさ指標を参考にします。
※ウレタンだけは、製品表示ラベルからNという数値でかたさを知ることができます。
JIS規格のN(ニュートン)値と硬度の定義は次の通りです。
【硬さのスペックとN値 対照表】
区分 | 用語(表示名) |
110ニュートン以上 | かため |
75ニュートン以上110ニュートン未満 | ふつう |
75ニュートン未満 | やわらかめ |
データソース:消費者庁HP
体表的なおすすめ素材は以下です。
- 高反発ウレタン
- 高反発ファイバー
- ラテックス
- 低反発ウレタン
- 綿(合成・自然含む)
- 体重に適した硬さを選ぶ。
通気性
通気性には、次のメリットがあります。
- 体温・湿度を適度に下げ、眠りを深める。
- 睡眠環境を整えて、途中で目覚めにくくする。
選ぶときは、マットレスの素材や加工に注目するのもポイントです。
● 通気性に優れた素材は以下です。
- オープンセルウレタン
- 高反発ファイバー
- 綿(合成・自然含む)
一般的なウレタンフォーム(下図左)の内部にはたくさんの気泡がありますが、各気泡は密閉成型されているため通気性は皆無です。
対して、オープンセル(下図右)には、気泡間に無数の通気孔があるため、ウレタン内部を空気が通過できます。
● 通気性に優れた加工には次のようなパターンがあります。
- スリット(溝)加工
- ボーリング(穴)加工

- 通気性の高い素材を選ぶ。
- 素材自体に通気性がなくても、カッティングやボーリングなどで通気性を高めた作りのものを選ぶ。
多層構造
マットレスの多層化には、次のメリットがあります。
- 性能の異なる素材を重ねることでデメリットを無くし、上質な寝心地にする。
体圧分散性にしても、やわらかさ・反発力・かたさ・通気性といった特性が必要で、ひとつの素材だけで理想的な体圧分散を実現するのは難しいことです。
事実、性能の良いマットレスは、2層以上の素材を重ねて作られることがほとんどです。
【効率的な多層構造のマットレスと各層の役割】
- 第一層:柔らかさ・通気性重視の素材を使い、体圧分散をサポ―ト。
- 第二層以下:高反発性・サポート力重視の素材を使い、寝返りと反り腰予防をサポート。
基本的に、層が増えるほど繊細で上質な寝心地になりますが、価格も高額になります。
- 体圧分散性とサポート力を両立させるには、2種類以上の素材を組み合わせた多層構造がマスト。
体圧分散 マットレス|まとめ
体圧分散はマットレスに欲しい性能の一つです。
一見、「柔らかさ」だけあれば良いように見えますが、マットレスには反発力と保持力も必須で、素材と構造選びがポイントになります。
【体圧分散性に優れたマットレスを選ぶポイント】
以下全てを満たしているものが理想のマットレスです。
- 反発性がある。
- 柔軟性がある。
- 適度なサポート力がある。
- 通気性を担保する構造や加工がある。
- 多層構造をしている。
やわらいだけ・かたいだけ・反発するだけのマットレスを選ぶと失敗するので、「体圧分散」の表記に誤魔化されないよう注意してください。
以上、体圧分散のメリットとマットレスの選び方&解説でした。